ファーストタッチの重要性〜見る側とやる側のズレ〜
ファーストタッチは自分が描いた理想のプレーをするためのタッチ
皆さんはファーストタッチの重要性を考えたことありますか?
「プレーを開始する一番初めのタッチ」であるファーストタッチを軽視することは出来ません。このタッチが上手く出来るかどうかは次のプレーを行う上で非常に大切です。
神は細部に宿る
サッカーを見ていて「こいつ上手いな」と思う瞬間はいくらでもあります。ドリブルで相手を抜く瞬間、スーパーゴール、相手のスキを突くスルーパス等...一瞬に巧みなスキルが宿るのがサッカーです。
その一瞬に注目するとファーストタッチはあまりにも地味です。ドリブルで抜く華やかさもなければ、ど肝を抜くシュートでもありません。しかしそれらのプレーの始まりは全てファーストタッチから始まっているのです。神は細部に宿るという言葉がありますが、ファーストタッチこそそれに当てはまると思います。
あまりにも地味すぎてそこに注目する人は少ないです。多少ファーストタッチが乱れても、数多くある、よく見慣れた光景だからこそ誰も反応しないのです。しかしファーストタッチには明らかに「上手い」「下手」があるのです。
その「上手い」「下手」を分けるラインはどこにあるのか。それは「自分の描いたプレーにスムーズに入れるかどうか」ということだと私は考えています。
例えばファーストタッチに注目した時に、明らかにファーストタッチが乱れたとします。そこだけを抜き取れば「下手」「失敗」となりますが、その次のプレーが上手くいったとしたらそのファーストタッチは「上手い」「成功」になるのです。なぜならプレーする選手が描いた理想のプレーに入るためのトラップが出来たということだからです。
例えばこの動画の1:06秒のメッシのトラップを見てみると、浮いてしまっています。
Most Epic Ball Controls In Football ● Amazing First Touch
ここだけを抜き取れば「下手」「失敗」になりますがこれは「上手い」「成功」なのです。相手選手はメッシのトラップの瞬間を狙っています。もしピッタリと足元に止めてしまうと相手ディフェンダーが寄せてきて取られる可能性があります。しかしボールを浮かせることで相手選手のプレスから逃れボールキープが出来ます。メッシは意図してこのトラップを選択したのです。
ただこの「自分が描いたプレーにスムーズに入れるか」という点は見ているこちら側からはわかりません。選手がプレーの一つ一つを解説してくれるわけではないからです。また厄介なのは言わないで良いからこそ、聞かれた時に自分の都合の良いように言えるということです。そのため我々はファーストタッチの「上手い」「下手」というのを「綺麗にトラップ出来たかどうか」に置くのです。これが可視化出来て一番わかりやすいので、悪いとは言いません。
しかしファーストタッチはあくまでファーストタッチ。最初にも言ったようにファーストタッチは「プレーを始める最初のタッチ」です。一見下手に見えてもプレーしている本人が意図するファーストタッチが出来れば上手いタッチなのです。
そしてもう一つ重要なのはファーストタッチはどれだけ自分の描いた通りに出来ても、次のプレーが悪ければファーストタッチも悪かったことになります。それはあくまでファーストタッチが「次のプレーのためのタッチ」だからです。見ていて「うわぁ今のタッチうま!!!」と思っても次のプレーがショボければガッカリします。
例えば見る側が「今のファーストタッチ上手い!」と感じても選手が想像していたタッチと違った場合には「失敗」になります。逆にやる側が良いタッチが出来たと思ってもトラップ直後に取られてしまっては「失敗」になるのです。これはサッカー以外にもあることです。自分では「出来た!」「成功した!」と思っても結果的に失敗したら、それはは失敗だったということです。テストが出来た!と思っても予想よりも点数が悪かったという経験と同じです。
そういった厄介な側面を持っているファーストタッチ、あなたが思う「上手い」「下手」の基準はどこにありますか?